「手数料がどこに消えているか」を知らないと損をする
フリーランスエンジニアがエージェント経由で案件を受けるとき、クライアント(エンド企業)が実際に支払っている金額と、エンジニアが受け取る単価の間には必ず差額がある。これがエージェントのマージン(手数料)だ。
月単価80万円の案件でマージンが20%なら、クライアントは100万円を払っていても、エンジニアの手取りは80万円になる。マージンが10%なら、クライアント支払いが100万円でエンジニア受取は90万円だ——同じ案件でも10万円の差が生じる。
エージェント選びの際にマージン率を意識しないでいると、同じスキルレベルでも年間100万円以上の収入差が生まれることがある。
一方で、マージンだけを見ても正しい判断はできない。マージン率が低くても案件の質が低い、または担当者のサポートが薄ければ意味がない。マージン率と総合的な条件のバランスを見て選ぶ必要がある。

エージェントのマージンの仕組みを理解する
フリーランスエンジニアが受け取る単価がどのように決まるかを理解するためには、案件の構造を把握する必要がある。
案件の流れとマージンの発生箇所
エンドクライアント(例:大手IT企業)
↓ 発注(月単価○万円)
一次請け(プライムベンダー)← 中間マージン発生
↓
二次請け(エージェント)← マージン発生
↓
フリーランスエンジニア
直接エンドクライアントと契約できる「エンド直」案件と、複数の仲介が入る「多重下請け」案件では、フリーランスが受け取る単価の水準が大きく異なる。
エージェントが「エンド直」をうたっている場合でも、実際はプライムベンダーが間に入っているケースがある。案件を紹介された際に「エンドクライアントとの直接契約か」を確認することが重要だ。
マージン率の計算方法
エージェントがマージン率を開示していない場合でも、以下の情報があれば概算できる。
計算式:
マージン率 = (エンド単価 - エンジニア受取単価) ÷ エンド単価 × 100
エージェント担当者に「クライアント側の請求単価はいくらですか」と確認することができる。正直に教えてくれるエージェントと、教えてくれないエージェントで、透明性の違いが表れる。
主要エージェント比較
各エージェントの特徴とマージン傾向
| エージェント | 推定マージン率 | 案件数 | 強み | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| レバテックフリーランス | 10〜20% | 多い(3万件以上) | 大手クライアント、UI/UX良好 | Web系・モダンスタック |
| テックストック | 10〜15%(推定) | 中程度 | 高単価案件、専門性重視 | 経験5年以上の上位層 |
| Midworks | 15〜25% | 中程度 | 社会保険保障、正社員同等待遇 | 独立初期の安心感重視 |
| ギークスジョブ | 15〜25% | 多い | SIer・大企業案件 | Java・SAPなどエンタープライズ系 |
| pe-bank(旧:ITプロパートナーズ) | 10〜20% | 中程度 | 週2〜3日の副業案件 | 副業・パラレルワーク希望 |
| フリーランスプラス | 10〜20% | 少なめ | エンド直案件 | マージンを抑えたい |
※マージン率は各社の公表情報・業界情報をもとにした推定値。実際の案件によって異なる。
レバテックフリーランスの詳細評価
強み:
- 登録エンジニア数・案件数が業界最大規模
- 大手IT企業(メガベンチャー〜上場企業)の案件が多い
- 担当者の専門知識が高い
- 単価交渉サポートが充実
弱み:
- マージン率が非公開
- 高単価案件は競争倍率が高い
- 案件の選択肢が多すぎて選びにくいことも
向いているエンジニア: React/TypeScript、Python、AWS等のモダンスタック経験者で、大手クライアント案件を希望する場合。
テックストックの詳細評価
強み:
- 月単価100万円以上の高単価案件が豊富
- エンド直案件の割合が高い(中間マージンが少ない)
- 登録エンジニアのスキルを重視したマッチング
弱み:
- 対象エンジニアのレベルが高いため、経験年数が短い場合は案件が少ない
- 案件数はレバテックより少ない
向いているエンジニア: 経験5年以上でAWS・GCP・クラウドインフラ、あるいはシニア級の開発スキルを持つエンジニア。
Midworksの詳細評価
強み:
- 稼働中の社会保険(健康保険・厚生年金)を会社員並みに補償
- 給与保証制度あり(案件の空白期間でも一部収入を保証)
- 独立直後の不安を軽減できる
弱み:
- 上記サービスのコストがマージン率に反映されるため、受取単価は他社より低めになる傾向
- 高単価案件の種類はレバテック・テックストックより少ない
向いているエンジニア: 独立初期でセーフティネットを重視する、または家族持ちで収入の安定性を優先する場合。
複数エージェントを並行利用するときの注意点
フリーランスエンジニアが3〜5社のエージェントに同時登録することは一般的だ。ただし、並行利用にはいくつか注意点がある。
重複応募を防ぐ
複数エージェントから同じクライアントの同じ案件に応募してしまうと、クライアント側の混乱を招き、不採用になるリスクが高まる。応募時に「この案件、他のエージェントからも紹介されていないか」を担当者に確認するか、自分でトラッキングする。
管理方法:
- スプレッドシートで「エージェント名・案件名・クライアント名・応募日・状況」を記録
- 同じクライアントへの応募は1社のみにする
単価交渉に活用する
複数エージェントで競合させることで、単価交渉に使える材料ができる。「他のエージェントでは○万円の案件がありました」という情報は、担当者が単価をもう少し引き上げてくれる交渉材料になる。
ただし、架空の数字を使うと信頼関係を損なうため、実際に紹介された案件の数字だけを使う。
担当者との関係を維持する
エージェント担当者は、付き合いが続くほど自分のスキルと希望条件を把握して良い案件を優先的に紹介してくれるようになる。5社登録しても3社とはほとんど連絡を取らない状態では、1〜2社に絞って関係を深める方が実質的な案件の質が上がる。
エージェントを選ぶ際の5つのチェックポイント
1. 自分のスキルジャンルの案件が多いか
エージェントによって強い技術領域が異なる。登録前に「自分のスキルタグ(例:Python/Django、AWS、React)」で検索し、案件数を確認する。
2. マージン率を確認または推定できるか
「マージン率は開示できません」と即答するエージェントは、やや注意が必要だ。「概算でも教えてもらえますか」と聞いてみることで、担当者の対応の質も判断できる。
3. エンド直案件の割合が高いか
中間業者が入るほどマージンが多段階で抜かれる。エージェントのWebサイトや担当者に「エンド直案件の割合はどのくらいですか」と確認する。
4. 福利厚生・セーフティネットがあるか
社会保険保障、給与保証、税務相談サービスを提供しているエージェントは、マージン率が高め(Midworks等)になる傾向がある。福利厚生の価値と単価の低下分を比較して判断する。
5. 担当者の専門性があるか
担当者がエンジニア出身かどうかは、技術的な説明の伝わり方に大きく影響する。初回の面談で「担当者が自分の技術スタックをどの程度理解しているか」を確認する。
フリーランス独立の準備ロードマップ
エージェント選びの前に確認すべき独立準備のチェックリスト
エージェント不要のルート:エンド直接営業
エージェントを経由しない「エンド直接営業」で案件を取ることもできる。マージンがゼロになるため、同じ仕事でも受取単価が大幅に上がる。
エンド直案件の探し方:
- SNS(X/LinkedIn)で「フリーランス募集」を発信している企業をフォロー
- 技術勉強会・カンファレンスでのネットワーキング
- ブログ・技術記事を通じた問い合わせ受け(inbound)
- 前職のクライアントや知人からの紹介
ただし、直接営業は契約書・請求書・単価交渉をすべて自分で行う必要がある。エージェントが担っていた事務的な業務が増えるため、初案件には向かない。フリーランス経験を積んだ後のステップとして検討する。
個人受託開発の始め方
エンド直案件への移行を考えるときに読む

まとめ:マージン率は比較の出発点に過ぎない
フリーランスエージェントの手数料を理解したうえで選ぶ際のポイントをまとめる。
- マージン相場は10〜25%:開示しているエージェントは少ないが、聞いてみることで透明性を確認できる
- レバテックは案件数・大手クライアント、テックストックは高単価・エンド直が強み
- Midworksは社会保険保障が独自の価値で、初期のセーフティネットとして有用
- 3社並行利用が基本だが、実際に動くエージェントは2〜3社に絞って関係を深める
- マージン率だけで選ばない:案件の質・担当者の専門性・エンド直案件の割合を総合評価する
フリーランスとして長期的に収入を安定させるためには、エージェントとの関係を「一時的な仲介」ではなく「継続的なパートナー」として活用することが重要だ。
