「スクール卒はSESしかない」——この言説の正確な意味
プログラミングスクールを調べていると、「卒業後はSESしか行けない」という評価をよく目にする。これは完全に正しいわけでも、完全に間違いでもない。
正確に言うと、「スクール卒業後すぐに自社開発企業へ直接入社するのは狭き門で、多くの人がSES・SIerからキャリアをスタートさせている」が実態だ。
この現実を知らずにスクールに入ると、卒業後のキャリアのスタートに失望することになる。逆に、この現実を踏まえた上で戦略を立てれば、SESを経由して3〜5年後に自社開発企業へ転職するルートは普通に実現できる。
スクール費用は安くない。20〜70万円を投じるなら、卒業後の現実を知った上で判断するべきだ。
なぜスクール卒は自社開発企業に入りにくいのか
採用側から見た「スクール卒業生」の評価
自社開発企業がスクール卒業生に感じる懸念を正直に書く。
1. ポートフォリオがほぼ同じ
プログラミングスクールのカリキュラムは似ているため、卒業生のポートフォリオが横並びになる。ToDoアプリ・SNSクローン・ECサイトのクローンなど、採用担当者は同じようなポートフォリオを大量に見ている。「自分で考えて作った」のか「チュートリアルに従った」のかが見分けられてしまう。
2. 技術理解の深さへの懸念
学習期間3〜6ヶ月で習得できる技術知識には限界がある。自社開発企業は、設計の意図を説明できる・コードの改善点を自分から提案できる・エラーを自力でデバッグできる人材を求めている。スクールのカリキュラムをこなしただけでは、この基準に達しない場合が多い。
3. 即戦力になるまでの育成コスト
自社開発企業(特に小規模スタートアップ)は、育成に時間をかけられる余裕がないケースが多い。未経験のスクール卒業生を採用すると、3〜6ヶ月の育成期間中は生産性が低く、これがコストとして認識される。
| 採用理由 | 自社開発企業 | SES企業 |
|---|---|---|
| 即戦力性 | 重視する | あまり重視しない |
| ポートフォリオ | 技術理解の深さを確認する | 基本的なスキルがあれば合格 |
| 育成コスト | 小規模ほどかけられない | 現場で育つ前提で採用する |
| 採用数 | 少ない(慎重) | 多い(数を採る) |

SESに入ることの実際のデメリットとメリット
SES就職のデメリット:正直に書く
スクール卒業後にSESに入ることのデメリットを整理する。
1. スキルが積めない現場に入るリスク
SESは客先常駐型のため、入る現場によってスキルの積まれ方が大きく変わる。テスト・マニュアル作業が中心の現場に入ると、エンジニアとしてのスキルがほとんど積まれないまま2〜3年が経過するリスクがある。
2. 年収が上がりにくい構造
SESの年収は「単価(客先への請求額)−マージン」で決まる構造のため、技術力が上がっても年収に反映されにくいケースがある。年収アップには単価の高い現場への移動か、SES会社内での昇格が必要になる。
3. 自社開発企業への転職に使える実績になりにくい
SESの仕事は「何を作ったか」より「どの客先に常駐したか」が中心になりがちだ。自社開発企業への転職では「自分が設計・実装したもの」の実績が重要なため、SESの経歴がそのまま評価されないケースがある。
SES就職のメリット:見落とされがちな側面
一方でSESに入ることのメリットもある。
- 実務経験がゼロの状態より就職しやすい:選考の基準が自社開発企業より低く、「未経験から実務に入る」というステップとして機能する
- 様々な現場を経験できる:複数の現場を経験することで、自社開発企業にはない幅広い技術・業界の知識が身につく
- スキルアップの機会が現場によってはある:モダンな技術スタックを使う現場・チームに入れれば、実務での技術習得が可能
SESを「通過点」として使うなら、意味のある選択肢になる。問題は「終着点」にしてしまうことだ。
スクール卒業後に自社開発企業に入れた人の共通点
ポートフォリオで差をつけた事例
スクール卒業後に自社開発企業(スタートアップ)へ直接入社したエンジニアのケースを分析すると、共通するパターンが見える。
パターン1:課題解決型のオリジナルアプリを作った
「何かのチュートリアルを実装した」ではなく、「自分が実際に困っていた問題を解くためのアプリを作った」ポートフォリオは採用担当者の目に留まりやすい。小規模でも「誰かの役に立つ機能」を実装して、実際に使われているデモがあると差別化できる。
パターン2:OSSへのコントリビューションがあった
GitHubで使っているライブラリのバグ修正や軽微な機能追加のPRを出すと、「コードレビューの過程を経験している」「実際のOSSの開発フローを知っている」という実績になる。小さなPRでもマージされた実績は評価される。
パターン3:技術ブログで学習過程を発信していた
自分が学んだことをZennやQiitaに継続して投稿していたエンジニアは、技術への意欲・コミュニケーション力・言語化能力を同時にアピールできる。
SESに入った後に自社開発に転職した事例
スクール卒業後にSESに入り、2年後に自社開発企業へ転職したエンジニアのケース。
条件: スクール卒業→Java案件のSESへ入社→1年半で担当機能を設計から実装まで経験→その経験をもとに職務経歴書を書いて自社開発スタートアップへ転職
キーになったのは「担当した機能の技術的な詳細を語れる実績」と「スクール卒業後にも継続的に学習を続けていた証拠(技術ブログ・GitHubのコントリビューション)」だ。
SESと自社開発の違いを比較|転職前に知るべき現実
SESから自社開発へ転職する際に知っておくべき違いと必要なスキルを整理。
スクール選びで確認すべき3つのポイント
これから入るスクールを選ぶ人へ
スクールをこれから選ぶ段階の人には、以下の3点を確認することを勧める。
1. 卒業後の就職先の内訳を開示しているか
「就職率95%」という数字より、「その95%の就職先の内訳(自社開発・SES・SIer等の割合)」が重要だ。大半がSES企業への紹介であれば、スクール自体の就職支援はSES会社への橋渡しに過ぎない可能性がある。
2. カリキュラムがポートフォリオ作成に重点を置いているか
「チュートリアルを完了する」だけのカリキュラムより、「オリジナルアプリを作成してデプロイする」という実践的なカリキュラムの方が転職後に通用するポートフォリオを作れる。
3. 卒業生のGitHubやポートフォリオを確認できるか
実際の卒業生のポートフォリオを見ることで、「このスクールを出ると転職市場でどう見られるか」を事前に把握できる。
スクール卒業後の現実的な3〜5年戦略
フェーズ1:実務経験を積む(1〜2年)
スクール卒業直後は、「実務で使えるスキル」を身につけることが最優先だ。自社開発への入社にこだわって何十社も受け続けるより、実務に入る方が将来の転職成功率が上がる。
SESに入った場合は:
- 配属現場を選べる余地があるか(技術系の現場・モダンな技術スタックの現場を希望できるか)
- 現場でのコードの書き方・設計・コードレビューを学べる環境か
- 職務経歴書に書ける実績(担当機能・解決した課題)が積める現場か
を確認しながら進める。
フェーズ2:スキルと実績を積み上げる(2〜3年)
実務1〜2年後から転職活動を視野に入れて動く。
- 実務で担当した機能・システムの設計意図を語れるよう整理する
- スクール卒業後も技術ブログ・OSSコントリビューション・個人プロジェクトを続ける
- 実務で使った技術の深堀り(公式ドキュメント・関連書籍)
フェーズ3:自社開発企業へ転職する(3〜5年後)
実務経験3年、担当した機能の実績あり、継続的な学習の実績あり、という状態になると、自社開発企業への転職成功率は大幅に上がる。
SES3年目からの転職完全ガイド
SES3年の実績をもとに自社開発企業への転職を成功させるための具体的な手順を解説。

まとめ:スクール後の現実を知った上で戦略を立てる
プログラミングスクール卒業後の就職の現実を整理すると:
- 自社開発企業への直接入社は狭き門だが、ポートフォリオの質次第では不可能ではない
- SESを経由するルートは「失敗」ではなく、実務経験を積む現実的な方法だ
- SESに入った後に詰まらないためには、スキルが積める現場を選ぶことと、入社後も継続的な学習を続けることが重要
- 3〜5年のスパンで自社開発への転職を設計する戦略が最も成功確率が高い
スクール費用の投資を回収するためにも、短期的な就職先だけでなく3〜5年後のキャリアを見据えた戦略を立てることが重要だ。
