
SESエンジニアのリモートワーク問題——本音はどうなのか
「SESは客先常駐だからリモートは無理」——そう思っているエンジニアは多い。
確かにSESの基本形態は客先常駐だ。しかしコロナ禍を経て、IT業界全体のリモート対応が進み、状況は変化している。「SESだからリモートは一切できない」という時代ではなくなっている。
ただし「SESでもフルリモートが当たり前」は過剰な期待だ。現実はその中間にある。SESエンジニアのリモートワーク事情を、正確なデータと具体的な方法論で整理する。

SESのリモートワーク実態——数字で見る現状
SES案件のリモート対応割合
IT系の転職支援企業各社の公開データによると、2024年時点でのSES案件のリモート対応状況はおおよそ以下の通りだ。
| リモート形態 | 割合(推計) |
|---|---|
| フルリモート(週5日) | 10〜15% |
| ハイブリッド(週2〜3日在宅) | 15〜25% |
| 一部リモート(月数回) | 15〜20% |
| 完全出社のみ | 40〜55% |
フルリモートは全体の1〜2割程度と見ておくのが現実的だ。ただしこの割合は技術領域・スキルレベル・案件の性質によって大きく変わる。
リモート対応率が高い案件の特徴
リモートで対応しやすい業務とそうでない業務には、構造的な違いがある。
リモート対応率が高い業務:
- クラウドインフラの設計・構築(AWS・GCP・Azure)
- バックエンドAPIの開発・保守
- データエンジニアリング・分析基盤構築
- 機械学習モデルの開発・実装
- SREやDevOps関連
リモート対応が難しい業務:
- 金融・官公庁系のセキュリティポリシーが厳格な案件
- ネットワーク機器の物理作業を伴う案件
- ユーザー部門との対面での要件定義が必要な上流工程
- 新規参画直後(顔合わせ・引き継ぎ期間)
リモート案件を獲得するためのスキル戦略
リモート親和性の高い技術を習得する
上記の通り、クラウド・バックエンド・データ系の技術はリモート対応率が高い。これらの技術を持つエンジニアはリモート案件の選択肢が広がる。
AWSの場合、AWS認定ソリューションアーキテクト(アソシエイト)を取得することで、クラウド案件への参画資格を示せる。求人市場での需要も高く、保有者の単価は非保有者と比較して月5〜15万円程度高い傾向がある。
Pythonのバックエンド開発スキルも有効だ。FastAPI・DjangoでのAPI開発経験があると、リモートで完結する開発案件に入りやすくなる。
経験年数と単価がリモート取得の鍵
SES業界では一般的に、経験が浅いうちは常駐案件が多く、実績を積んだ上級エンジニアほどリモート案件を選べるようになる傾向がある。
これはリモートワークでは「自律的に動ける」ことが求められるためだ。経験が浅い段階では、物理的に近くでサポートを受けながら学ぶ環境の方が成長できるという判断もある。
目安として:
- 経験1〜2年:フルリモート案件の選択肢はかなり限られる
- 経験3〜5年:選べる案件の幅が広がり始める
- 経験5年以上:フルリモート案件を指名で取れるケースも出てくる
SES会社選びとリモートワーク
SES会社のリモート方針を見極めるポイント
SES企業は様々で、「リモート案件が多い」会社と「ほぼ常駐のみ」の会社がある。選ぶ段階でリモート実績を確認することが重要だ。
確認すべき事項:
- 現在リモートで稼働しているエンジニアの割合
- 過去1年でフルリモート案件があったかどうか
- リモート案件の優先打診をしてもらえるか
- 在宅時の通信費・機器代の支援制度
求人票の「リモート可」の記載は「この案件はリモートです」ではなく「リモート案件も紹介できる場合があります」という意味であることが多い。口頭での確認が必須だ。
客先常駐でも交渉できる場合
既にSES企業に在籍しており、現在の客先で常駐しているエンジニアが在宅勤務を交渉するケースもある。
成功しやすいのは:
- 客先でのパフォーマンスが高く信頼関係がある
- 業務がPCのみで完結し、物理的な出社の必要性がない
- 客先がITベンダー系でリモートに対する理解が高い
逆に交渉が難しいのは:
- 金融・行政系で情報漏洩リスクへの対応が厳格な場合
- 参画して日が浅く、信頼関係が構築されていない場合
リモート優先なら「自社開発」への転職を検討する
SES vs 自社開発のリモーク対応比較
フルリモートへの強いこだわりがある場合、SESという雇用形態の制約を受け続けるより、自社開発企業への転職を選ぶ方が根本的な解決策になる。
| 比較項目 | SES | 自社開発 |
|---|---|---|
| リモート対応率 | 20〜35% | 50〜70% |
| リモートの安定性 | 案件ごとに変わる | 会社のポリシーで統一 |
| 将来の予測可能性 | 低い(案件による) | 高い |
| 年収レンジ | 300〜600万円(中央値) | 400〜800万円(中央値) |
自社開発企業の方がリモートの「安定性」が高い。SESはリモート案件に入れても次の案件では常駐に戻る可能性がある。
SESと自社開発の違いについては、SES vs 自社開発:エンジニアのキャリア・年収・環境を徹底比較で詳しく解説している。
SES vs 自社開発:徹底比較
キャリア・年収・リモート環境の違いをデータで解説
SESのリモートワーク活用術:在宅時の生産性
リモートで結果を出すための環境整備
SESでリモート案件を獲得した後、重要になるのが在宅での生産性の維持だ。客先に常駐している場合と異なり、自己管理能力が問われる。
最低限の環境:
- デュアルモニター(会議しながら作業するために必須)
- 有線LANまたは安定したWi-Fi(セキュリティ上、有線が求められる客先もある)
- ノイズキャンセリングヘッドフォン
- Web会議用の照明(顔が見えないと印象が悪くなる)
コミュニケーションの工夫:
- 質問・報告をSlackに流す前に自分で5分調べてから聞く
- 進捗をこまめに共有する(存在感を示す)
- レスポンスの速さを一つの成果指標にする
リモートワークでの生産性維持については、リモートワーク生産性を上げる環境・習慣・ツールで詳しく解説している。
リモートワーク生産性向上ガイド
在宅勤務で成果を出すための環境・習慣・ツールの設計

まとめ:SESのリモートは可能だが条件がある
SESエンジニアのフルリモートは「不可能ではない」が「当たり前でもない」というのが現実だ。
重要なポイントをまとめると:
- SES全体のフルリモート案件は10〜15%程度 — 選べる立場になるにはスキルと実績が必要
- リモート親和性の高い技術領域がある — クラウド・バックエンド・データ系はリモート率が高い
- 経験5年以上でリモート案件を選べる立場になれる — 最初から完全リモートは難しい
- フルリモートを最優先にするなら自社開発転職が近道 — SESではリモートの安定性が保証されない
SES環境でのキャリアについてより詳しく知りたい場合は、SES転職のタイミングと年収アップ戦略も参考にしてほしい。
