クライアントが月100万円払っている。あなたの手取りはいくらだ?
SESエンジニアの平均年収は約408万円。月の手取りにすると約25万円。
一方、あなたが常駐している現場で、クライアントはSES企業に対して月60万〜100万円を支払っている。
この差はどこに消えているのか。答えは多重下請構造の中間マージンとあなたの会社の還元率だ。
この記事では、SESで年収が上がらない構造的な理由を数字で解明し、そこから抜け出す具体的な方法を解説する。「頑張れば報われる」という精神論ではなく、仕組みを理解して環境を変えるための記事だ。
SESの給与構造を数字で理解する
まず、SESでの報酬がどうやって決まるかを見てほしい。
あなたの月給が決まるまでの流れ
クライアント企業
↓ 月100万円で発注
元請け(大手SIer)
↓ マージン20万円を取り → 80万円で発注
二次請け(中堅SES)
↓ マージン15万円を取り → 65万円で発注
三次請け(あなたの会社)
↓ 還元率60%で → あなたに39万円
あなた
→ 社会保険等を引いて手取り約28万円
クライアントが100万円払って、あなたの手取りが28万円。約72%が途中で消えている。
これがSESの給与構造だ。あなたがどれだけスキルを上げても、この構造が変わらない限り大幅な年収アップは望めない。
還元率とは何か
還元率とは、SES企業が受け取る報酬のうち、エンジニアに支払う割合のこと。
自分の還元率を計算してみよう:
還元率 = 年収 ÷ 12 ÷ 月単価 × 100
例: 年収400万円、月単価65万円の場合
400万 ÷ 12 ÷ 65万 × 100 = 約51%
月単価は営業に聞けば教えてくれることが多い。教えてくれない会社は、それ自体が問題だ。
還元率による年収の違い
同じ月単価60万円でも、還元率次第で年収はここまで変わる。
| 還元率 | 月給 | 年収(賞与含む概算) |
|---|---|---|
| 50% | 30万円 | 約400万円 |
| 60% | 36万円 | 約480万円 |
| 70% | 42万円 | 約560万円 |
| 80% | 48万円 | 約640万円 |
還元率が10%違うだけで、年収は80万円変わる。 今の会社の還元率が60%未満なら、同じスキルのまま環境を変えるだけで年収が上がる可能性が高い。

年収が上がらない5つの理由
「頑張っても年収が上がらない」のは、あなたの努力不足じゃない。SES業界の構造的な問題だ。
理由1: 多重下請構造の中間マージン
前述の通り、クライアントが支払う金額は複数の会社を経由するたびに目減りする。三次請け・四次請けに所属しているなら、この時点で年収の上限が決まっている。
理由2: 還元率が低い(そして公開されていない)
一般的なSES企業の還元率は55〜65%程度。しかも、多くの会社は還元率を公開していない。「うちは業界平均以上です」と言いつつ、実際は50%台というケースもある。
還元率を公開しない会社に所属している時点で、年収交渉は不利になる。交渉の材料がないからだ。
理由3: 単価に上限がある
SESの報酬は「人月単価」で決まる。この単価には市場相場がある。
2026年のSES単価相場:
| スキルレベル | 月単価 | 年収目安(還元率60%) |
|---|---|---|
| 未経験〜1年 | 45万〜55万円 | 320万〜400万円 |
| 2〜3年 | 55万〜70万円 | 400万〜500万円 |
| 4〜5年 | 65万〜80万円 | 470万〜580万円 |
| 6年以上 | 75万〜100万円 | 540万〜720万円 |
| PM/PL | 90万〜120万円 | 650万〜860万円 |
ベテランでも月単価100〜120万円が天井。SESでの年収上限は700万〜800万円程度で、これ以上は構造的に難しい。
理由4: スキルアップが給料に反映されない
自社開発なら、技術力が上がればプロダクトの売上に貢献でき、それが評価・昇給に繋がる。SESでは、スキルが上がってもそれを単価に反映するのは営業の仕事であり、エンジニア本人にはコントロールできない。
AWSの資格を取っても、客先での評価が良くても、営業が単価交渉しなければ年収は変わらない。
理由5: 昇給制度が形だけ
「年1回の昇給あり」と書いてあっても、実際の昇給額が年1万〜3万円というSES企業は多い。年2万円ずつ上がっても、10年でたった20万円だ。
自社開発企業やメガベンチャーでは、スキルや成果に応じて年収が数十万円単位で上がることもある。この差が、5年・10年で大きな格差になる。
SESエンジニアの年収相場データ
自分の年収が相場と比べてどうなのか、確認してほしい。
経験年数別
| 経験年数 | 年収レンジ | 中央値 |
|---|---|---|
| 未経験〜1年 | 280万〜350万円 | 310万円 |
| 2〜3年 | 330万〜420万円 | 370万円 |
| 4〜5年 | 380万〜500万円 | 430万円 |
| 6〜7年 | 430万〜550万円 | 480万円 |
| 8年以上 | 480万〜650万円 | 540万円 |
3年目で400万円を超えていなければ、相場より低い可能性がある。
言語・技術別の単価
使う技術によっても単価は変わる。レガシー技術とモダン技術で月5万〜20万円の差がある。
| 言語・技術 | 月単価相場 | 備考 |
|---|---|---|
| COBOL | 55万〜70万円 | 需要は減少傾向 |
| Java(レガシー) | 55万〜75万円 | 金融・大企業向け |
| Java(Spring Boot) | 65万〜85万円 | モダンJavaは需要高 |
| PHP | 55万〜75万円 | Web系中心 |
| Python | 65万〜90万円 | AI/データで需要増 |
| TypeScript/React | 65万〜90万円 | フロントエンド需要 |
| Go | 75万〜100万円 | 需要急増、高単価 |
| AWS/クラウド | 70万〜100万円 | インフラ需要高 |
もしCOBOLやレガシーJavaの案件にいるなら、モダン技術を習得するだけで月単価が10万〜20万円上がる可能性がある。
SES優良企業の見分け方|還元率・面接で見抜く7つの質問
還元率70%以上の優良SESを見つける具体的な方法。転職先選びの必読記事。
SESのまま年収を上げる3つの方法
「すぐに転職は難しい」という人向けに、SES内でできることを3つ挙げる。
方法1: 営業に単価交渉を依頼する
意外とやっていない人が多い。契約更新のタイミングで、営業に単価交渉を依頼する。
交渉が通りやすいタイミング:
- 契約更新の1〜2ヶ月前
- 担当範囲が広がった時
- 資格を取得した時
交渉材料として「同スキルの求人単価を調べて見せる」のが効果的。月単価が5万円上がれば、還元率60%でも年収36万円アップになる。
ただし、営業が動いてくれない会社もある。その場合は方法3を検討した方がいい。
方法2: 高単価案件への異動を希望する
同じSES企業でも、案件によって単価は違う。テスト工程メインの案件と、上流工程+モダン技術の案件では月10万〜20万円の差がある。
高単価になりやすい案件の特徴:
- 上流工程(要件定義・設計)に関われる
- クラウド、コンテナ、CI/CDなどモダン技術を使う
- PM/PLポジションがある
- 金融・医療など専門性の高い業界
営業に「次はこういう案件に入りたい」と明確に伝えよう。言わなければ、会社はあなたの希望を知りようがない。
方法3: 還元率の高いSES企業に移る
これが最もインパクトが大きい。SES業界内の転職だからハードルも低い。
具体例(月単価65万円の場合):
今の会社(還元率60%): 65万 × 0.60 × 12 = 468万円
移籍先 (還元率75%): 65万 × 0.75 × 12 = 585万円
差額: +117万円
働き方もスキルも変えずに、年収だけ117万円アップ。還元率を公開していて70%以上の会社を選ぶだけでいい。
転職で年収を上げる方法
SESから別の業態に移ることで、さらに大きな年収アップが見込める。
転職先別の年収アップ幅
| 転職先 | 年収レンジ | アップ幅の目安 |
|---|---|---|
| 大手SIer | 500万〜700万円 | +100万〜200万円 |
| 自社開発(ベンチャー) | 450万〜600万円 | +50万〜150万円 |
| 自社開発(メガベンチャー) | 550万〜800万円 | +150万〜300万円 |
| 社内SE | 450万〜600万円 | +50万〜150万円 |
| フリーランス | 600万〜1000万円 | +200万〜400万円 |
転職で年収が上がりやすい人の特徴
- 今の年収が相場より低い(還元率60%未満)
- モダン技術(クラウド、コンテナ)のスキルがある
- 3年以上の実務経験
- ポートフォリオや個人開発の実績あり
逆に、経験1年未満で大幅アップは現実的じゃない。まずは経験を積むか、還元率の高いSESに移ることを優先する方がいい。
エージェントの使い方
SESの給与構造を理解しているエージェントを選ぶべきだ。「還元率が低くて」と言って通じないエージェントでは、適切な年収交渉は期待できない。
TechGoはアドバイザーの8割が元エンジニア・ITコンサル出身で、SESの構造を理解している。年収アップ率95%、平均138万円アップの実績は、SESからの転職者が多いことを示している。
年収を上げるためのスキル戦略
環境を変えるにしても、スキルがあった方が有利なのは間違いない。2026年時点で、年収アップに直結するスキルは以下の通り。
高単価・高年収に繋がるスキル
| スキル | 年収への効果 |
|---|---|
| AWS/Azure/GCP | +50万〜100万円 |
| Docker/Kubernetes | +30万〜80万円 |
| TypeScript/React | +30万〜60万円 |
| Python(AI/ML) | +50万〜120万円 |
| Go | +40万〜80万円 |
JavaのSESエンジニアなら、Java + AWS + Dockerの組み合わせを身につけるだけで、単価が月10万〜20万円上がる可能性がある。年収換算で72万〜144万円のアップだ。
資格の効果
| 資格 | 単価/年収への効果 |
|---|---|
| AWS認定ソリューションアーキテクト | +月3万〜5万円 |
| Oracle Java Silver/Gold | +月2万〜4万円 |
| Kubernetes認定(CKA) | +月5万〜8万円 |
資格は単価交渉の客観的な材料になる。営業に「AWS資格を取りました。単価交渉をお願いします」と言えば、交渉の理由が立つ。
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まとめ:仕組みを知れば、打ち手が見える
SESで年収が上がらないのは、5つの構造的な理由がある。
- 多重下請構造で中間マージンが抜かれる
- 還元率が低い(しかも非公開のことが多い)
- 月単価に市場相場の上限がある
- スキルアップが給料に反映されにくい
- 昇給制度が実質機能していない
この構造を理解すれば、打ち手は3つに絞られる。
- 小さい一歩: 営業に単価交渉を依頼する
- 中くらいの一歩: 還元率の高いSES企業に移る
- 大きな一歩: SES以外の業態に転職する
まずは自分の還元率を計算してみてほしい。それだけで「このまま今の会社にいるべきか」の判断材料になる。
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