
月5万円という数字は正直どのくらい現実的か
「副業で月5万円稼げる」と書かれた記事は多い。ただ、その記事の末尾には決まってフリーランスエージェントへの登録リンクがある。送客が目的の記事が「難しい」と書くはずがない。
この記事はそういう構造ではない。エンジニア副業で月5万円を達成するまでに何が必要で、税金で実際いくら引かれて、会社にバレるリスクがどこにあって、失敗しやすいパターンはどれか——そこを正直に書く。
読んだあとに「自分には今は早い」と判断するのも、「今すぐ始める」と判断するのも、あなた自身が決めることだ。
SESで年収が上がらず、転職はまだ踏み切れない。月3〜5万円でも自分でコントロールできる収入が欲しい——そういう状況を想定して書いている。SESで年収が構造的に上がりにくい理由をまず理解した上で、副業という選択肢を検討してほしい。

エンジニアが副業で月5万円を稼ぐのは現実的か
副業をしているエンジニアの割合と収入分布
エンジニアの副業参加率は、転職サイトや人材会社の調査によって10〜20%程度とされている(ただし調査母集団や定義にばらつきがあり、公的な統計としての精度は高くない点に留意してほしい)。月5万円以上を安定して稼いでいる層は、経験3年以上のエンジニアに集中しているのが実態だ。
「副業で月5万」は不可能ではないが、いきなり達成できる数字でもない。最初の数ヶ月は月1〜2万円の案件からスタートして、徐々に単価と稼働量を増やしていくのが現実的なルートだ。
月5万円に到達するまでの現実的な期間
経験年数によって到達期間の見通しは大きく変わる。
実務経験1年未満のエンジニア
まだスキルの市場価値が限られる段階で、継続案件を取るのが難しい。クラウドソーシングで月1〜2万円レベルから試すのが現実的で、月5万円の安定には半年〜1年以上かかることが多い。
実務経験2〜3年のエンジニア
既存の技術スタックで小規模の開発案件やコードレビューを受けられる。クラウドソーシングとSNSのどちらからも案件が取れるようになり、3〜6ヶ月で月5万円に到達できるケースがある。
実務経験3年以上のエンジニア
継続的な開発委託やフリーランスエージェント経由の単発案件が取りやすい。スキルとポートフォリオが整っていれば、1〜2ヶ月で月5万円ラインに乗ることもある。
「月5万は誰でも稼げる」という記事が言わない真実
多くの副業解説記事が書かない事実を列挙しておく。
- 立ち上がりの3ヶ月は投資期間:プロフィール作成、ポートフォリオ整備、案件への応募と落選の繰り返し。この間の収入はほぼゼロか微小。
- 副業の時給は本業より低いことが多い:慣れないうちは想定の2〜3倍の時間がかかる。時給換算で本業の半分以下になる案件も珍しくない。
- 月5万円を維持するには毎月の営業活動が必要:案件は永続しない。次の案件を探しながら現在の案件をこなす状態が続く。
SESで年収が上がらない構造的な理由と対処法
副業を検討する前に、まず年収が上がらない原因を理解しておくと判断が変わる

SESエンジニアが副業を始める前に確認すること
SES特有の制約は一般的な副業ガイドではほぼ触れられていない。この項は特に丁寧に読んでほしい。
就業規則と契約書の確認ポイント
まず自社(SES企業)の就業規則を確認する。「副業禁止」の条項があるかどうかを見る。大企業ほど明文化されている率が高く、スタートアップや中小SES企業は曖昧なケースも多い。
確認する箇所は2つ。
1. 副業・兼業禁止条項 「本業に支障をきたさない範囲での副業は認める」という表現の会社と、「一切禁止」の会社がある。表現が曖昧なら人事か上長に確認する方が後のリスクを減らせる。
2. 競業避止義務 「同業他社または競合する事業への従事を禁じる」という条項がある場合、エンジニアとしての副業(受託開発など)がこれに抵触するかどうかは解釈次第になる。ITスキルを活かした副業全般が対象になるよう広く書かれている会社もある。
常駐先の情報を使わないための注意点
SESエンジニアが副業をする上で見落としやすいリスクがこれだ。
常駐先で触れる仕様、コード、業務フローなどは基本的に機密情報扱い。副業の案件で「以前似たような設計を見たことがある」という感覚で使ってしまうと、情報漏洩に該当するリスクがある。
技術的なアプローチや一般的な設計パターンは問題ないが、特定のシステムの仕様や社内ルールに近いものを副業で流用するのは避けるべきだ。副業の契約書に「守秘義務遵守」が含まれているかも確認する。
副業開始のタイミング
プロジェクトの繁忙期に副業を開始するのは避ける。本業と副業の両立が最初から破綻し、どちらもパフォーマンスが落ちる。
開始するなら本業の繁忙サイクルを把握した上で、比較的落ち着いた時期の1〜2ヶ月前から準備を始めるのが現実的だ。
月5万円に現実的に届くエンジニア副業5選
週1〜土日でできる案件タイプ
エンジニアの副業を収入と稼働時間のバランスで整理した。
| 副業タイプ | 単価の目安 | 月5万に必要な稼働 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| Webサイト制作(HTML/CSS/JS) | 3万〜15万円/件 | 月2〜3件 | 低〜中 |
| API開発・バックエンド開発 | 5万〜30万円/件 | 月1〜2件 | 中 |
| コードレビュー・技術顧問 | 時給3,000〜8,000円 | 月7〜17時間 | 中〜高 |
| 技術記事・ブログ執筆 | 1万〜5万円/本 | 月5〜10本 | 低 |
| プログラミング講師(オンライン) | 時給2,000〜5,000円 | 月10〜25時間 | 低〜中 |
Webサイト制作は実務経験が少なくても入りやすい。コーポレートサイトや LP の受注はクラウドソーシングでも案件数が多い。ただし単価が低く、競合も多い。
API開発・バックエンド開発はSESエンジニアのスキルが直接活きる。1件5万〜20万円の案件を月1本取れれば月5万は達成できる。クラウドソーシングよりSNS経由の方が単価は高い傾向がある。
コードレビュー・技術顧問は経験3年以上なら参入できる。スタートアップや個人開発者から需要がある。継続契約になりやすく、安定した収入になりやすい。
技術記事執筆は即金性は低いが、ストック型の収入になる。Zennやnoteの有料記事、技術メディアへの寄稿で月1〜2万円からスタートする人が多い。
プログラミング講師はMENTAやストアカなどのプラットフォームで案件を取れる。生徒が継続してくれれば安定するが、単発で終わることも多い。
クラウドソーシング vs フリーランスエージェントの使い分け
実務経験2年未満はクラウドソーシングから ランサーズ・クラウドワークスは小額案件が多いが、実績ゼロから始めやすい。最初の3〜5件で評価を積んでから単価を上げていく。
実務経験3年以上はフリーランスエージェントも選択肢に レバテックフリーランス、Midworksなどは週2〜3日の副業案件も扱っている。単価が高い分、スキルセットの証明を求められる。ポートフォリオとGitHubの整備が前提になる。
SEの年収相場と年収アップ戦略まとめ
副業で稼ぐ前に、まず本業の年収が相場通りかチェックしておこう

副業の税務と手取りを正直に計算する
月5万円×12か月 = 年60万円の税後手取りシミュレーション
副業で年60万円稼いだ場合の手取りを試算する。前提は本業がある会社員で、副業収入が「雑所得」に分類されるケース。
前提条件
- 本業年収: 400万円(SES3年目の目安)
- 副業収入(雑所得): 年60万円
- 経費: 年6万円(通信費・書籍・PC等)と仮定
- 副業の事業所得(雑所得): 60万円 − 6万円 = 54万円
所得税の計算(概算)
副業の雑所得54万円は、本業の課税所得に上乗せして計算される。
本業年収400万円の場合、所得控除後の課税所得は概ね200万〜230万円程度。ここに副業の54万円が加わると、税率15〜20%が適用される区間に乗る。
副業54万円に対する追加所得税の概算:約8万〜10万円
住民税の計算(概算)
住民税は所得に対して一律10%。
副業の54万円に対する住民税:約5万4,000円
実質手取りの試算
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 副業収入(年間) | 60万円 |
| 経費(推定) | −6万円 |
| 所得税(追加分概算) | −約9万円 |
| 住民税(追加分概算) | −約5万4,000円 |
| 実質手取り(概算) | 約39万〜40万円 |
月換算すると約3万2,000〜3万4,000円が手元に残る計算になる。
「月5万円稼げる」は額面の話で、税後手取りは月3万円台が現実だ。この差を把握した上で、「それでも始める価値があるか」を判断してほしい。
確定申告が必要なケースと20万円ルールの正確な解説
よく誤解される「年間20万円ルール」を整理する。
確定申告が不要なケース(年20万円以下ルール) 会社員が副業で得た所得(収入から経費を引いた後の金額)が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要。ただしこれは所得税の申告が不要というだけで、住民税の申告は別途必要になることがある。
確定申告が必要なケース
- 副業の所得(収入−経費)が年間20万円を超える
- 医療費控除など他の理由で確定申告をする(この場合、副業収入も合算して申告が必要)
月5万円の副業であれば年収60万円となり、経費を差し引いても所得が20万円を超えるため、基本的には確定申告が必要と考えておくべきだ。
経費計上できるもの一覧
副業に関連する支出は経費にできる。
| 経費の種類 | 按分の考え方 |
|---|---|
| PC・周辺機器 | 副業専用なら全額、兼用なら使用割合で按分 |
| 通信費(スマホ・ネット) | 副業利用割合で按分(例: 20〜30%) |
| 書籍・技術学習費 | 副業に直接関係するもの |
| クラウドサービス(AWS等) | 副業案件で使用する分 |
| 作業スペース(コワーキング) | 副業作業に使った時間・日数で按分 |
副業を始めたら支出の記録を残す習慣をつけること。領収書・カードの明細・利用メモを保管しておく。
副業が会社にバレない方法(住民税対策)
バレる仕組み——住民税から経理担当が気づく
副業が会社にバレる最大の経路は住民税だ。
会社員は通常、住民税を会社経由で給与から天引きされる(特別徴収)。この金額は会社の経理担当が把握している。
副業で収入を得て確定申告をすると、副業分の住民税が上乗せされて計算される。会社が受け取る「特別徴収税額の通知書」に記載される金額が前年と比べて大きく増えると、「給与以外の収入がある」と気づかれる可能性がある。
普通徴収への切り替え手順
確定申告の際に手続きをすれば、副業分の住民税だけを「普通徴収」(自分で納付)に切り替えられる。
手順:確定申告書第二表の記入
確定申告書 第二表(「住民税・事業税に関する事項」欄)に以下の項目がある。
「給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」
□ 特別徴収 □ 自分で納付(普通徴収)
ここで「自分で納付」にチェックを入れることで、副業分の住民税は自宅に納付書が届き、自分で支払う形になる。会社への通知には副業分が含まれなくなる。
e-Taxで申告する場合も同じ項目がある。「給与以外の所得の住民税」を「普通徴収」に変更するチェックボックスを必ず確認すること。
注意点:給与所得として副業をしている場合は使えない
副業先からも給与として収入をもらっている場合(アルバイト扱いの副業等)は、この方法では完全には防げない。雑所得・事業所得として受け取る形にするか、法人を作るかという選択になる。副業案件を請負(業務委託)で受ける形にすれば雑所得として扱われる。
副業禁止企業でバレた場合のリスクの現実
就業規則で副業が禁止されている会社でバレた場合、どうなるか。
法的には、副業禁止規定違反は懲戒事由になり得る。実際に解雇になるケースは稀だが、注意・警告・昇格への影響は起こりうる。「バレたら終わり」ではないが、「バレても問題ない」でもない。
現実的には「副業の事実が発覚する」→「上司との話し合いになる」→「業績に影響がなければ黙認される」というケースが多いが、それは会社と上司の裁量次第だ。
住民税対策を適切にやれば経理から気づかれるルートはほぼ塞げる。それ以外のバレるルートは「本人がSNSなどで発信する」「副業先から自社へ連絡が来る」「同僚に話す」といったヒューマンエラーによるものが大半だ。
副業を始めた人がやりがちな失敗5選
失敗1:契約書なしで始めて未払いが発生する
「知人のツテだから契約書は不要」と思って進めた受託開発で、納品後に支払いを引き伸ばされる——これは副業トラブルの中で最も多いパターンのひとつだ。
具体的なシナリオ 知り合いの会社のWebサイト改修を8万円で受けた。契約書なしで口頭合意のみ。納品後「想定と違う」と言われ、追加修正を求められ続ける。最終的に支払いが3〜4ヶ月遅延し、半額しか回収できなかった。
対策 金額が1万円以上なら必ず書面(または電子契約)で契約を締結する。クラウドソーシングを使えばプラットフォームがエスクロー(仮払い)で保護してくれるため、未払いリスクはほぼゼロになる。
失敗2:スコープ外の無償作業を断れない
固定報酬で受けた案件で、最初の要件に含まれないはずの機能追加を次々と求められる。断ると「依頼を取り消す」と言われ、結局無償で対応してしまう。
具体的なシナリオ 「LPを1枚制作、5万円」で合意したのに、途中から「管理画面も追加してほしい」「月次レポートのメール配信機能も」と追加要望が増加。全て対応した結果、実稼働40時間以上で時給1,200円以下になった。
対策 最初の契約書に「本契約の範囲外の作業は別途見積もりを提示する」と明記する。追加要望が来たら「確認します」と即答せず、必ず別見積もりを出す。「それなら他の人に頼む」と言われたら、その案件は初めから採算が取れない案件だったと考えていい。
失敗3:確定申告を忘れて延滞税が発生する
副業1年目で確定申告の存在を知らず、翌年に税務署から通知が来るケース。副業収入が年20万円超なのに申告しなかった場合、無申告加算税(最大15〜20%)と延滞税が課される。
具体的なシナリオ 副業で年間80万円稼いだが「会社が年末調整をしてくれるから大丈夫」と思い込んで確定申告をしなかった。2年後に税務署の調査が入り、追徴税額が本来の税額の1.5倍以上になった。
対策 副業を始めた年から確定申告を習慣にする。e-Taxを使えば自宅から申告できる。収入・経費の記録は月次でスプレッドシートに記録しておく。
失敗4:副業疲れで本業のパフォーマンスが低下する
週末と平日夜を副業に充てた結果、睡眠不足と疲労が蓄積し、本業のアウトプットが落ちる。最悪の場合、本業の評価が下がって昇給機会を失い、副業で稼ぐより損するケースがある。
具体的なシナリオ 平日夜2時間+土日5時間の副業で月7万円を稼いでいたが、3ヶ月後に本業での重要プロジェクトでミスが増え、上長から指摘を受けた。翌年の評価が下がり、昇給が止まった。結果として年収ベースで見ると副業で稼いだ分が飛んだ。
対策 副業の稼働上限を決めてカレンダーに反映する(例: 週末8時間まで)。本業の繁忙期は副業の受注を止める。「月5万円」を目標にするより「本業を犠牲にしない範囲で」を最優先条件にする。
失敗5:低単価案件の沼から抜け出せない
クラウドソーシングで実績を積もうとして低単価案件を受け続け、そのまま単価が上がらない状態が続く。
具体的なシナリオ 「まずは実績を作ろう」と時給700〜1,000円相当のWebサイト制作案件を半年続けた。評価は付いたが、クライアントが低価格に慣れてしまい単価交渉が通らない。同じプラットフォーム内での評価は貯まっているが、外部での信用には繋がらない。
対策 クラウドソーシングは最初の3〜5件で実績を作る場として使い、その後はSNS経由や紹介経路での案件獲得に移行する。クラウドソーシングの評価よりGitHubのポートフォリオとLinkedInの方が、高単価案件の受注には効く。

月5万円を達成した後の次のステップ
副業実績をポートフォリオに転換する
副業で納品した成果物は、転職活動のポートフォリオとして強力な素材になる。「実際にクライアントからお金をもらった仕事」は個人開発より信頼性が高い。
- GitHubに副業案件のコード(守秘義務に抵触しない範囲)を公開する
- 納品実績を数値化する(「LP 3件、コンバージョン率改善 12%」など)
SES経験3年のエンジニアが副業実績を加えると、自社開発系企業への転職時の評価が変わる。
SES3年目の転職戦略と市場価値の上げ方
副業実績を武器に転職するなら、この記事の戦略が参考になる
SES vs 自社開発、どちらが自分に合う?
転職先の選び方で迷ったらまずこの比較から
副業 vs 転職——年収アップの費用対効果を正直に比較する
| 選択肢 | 時間投資 | 収入増加(年間) | リスク |
|---|---|---|---|
| 副業(月5万安定) | 月20〜40時間の継続作業 | 税後約40万円 | 案件が途切れると収入ゼロ |
| SES→高還元率企業へ移籍 | 転職活動1〜3ヶ月 | 年60〜120万円アップの可能性 | 転職先の選択ミス |
| SES→自社開発転職 | 転職活動2〜4ヶ月+スキル準備 | 年50〜200万円アップの可能性 | 面接対策の負荷 |
エンジニアの年収相場についてはSEの年収相場と年収アップ戦略で詳しく解説している。
副業は即効性があるが、転職は年収ベースが変わるため長期リターンが大きい。SESの構造上、年収700万円以上は難しく、副業で月5〜10万円積んでも年60〜120万円の上乗せにとどまる。転職で年収ベースが100万円上がれば、副業月8万円分に相当する。
副業は「転職の準備期間に収入を補う手段」か「転職後の副収入」として使うのが最も効率的かもしれない。副業で実績を積みながら転職準備を並行するルートを検討するなら、IT特化のエージェントに早めに相談して市場での立ち位置を把握しておくといい。
- 月5万円の手取り現実: 年60万円稼いでも税後手取りは年約40万円(月3万2,000〜3万4,000円)
- SES特有の準備: 就業規則・競業避止条項を確認してから動く
- 会社バレ対策: 確定申告書第二表で副業分の住民税を普通徴収に切り替える
- 失敗を避ける: 契約書・スコープ管理・本業とのバランスが最重要
