「PHPオワコン」をデータで検証する
「PHPはオワコン」という言説は2015年頃から繰り返されている。10年以上言われ続けているが、PHPはまだ現役だ。
ではなぜ「オワコン」と言われるのか。そしてデータは何を示しているのか。感情論ではなく数字で確かめる。
PHPエンジニアとして働いている人、PHPを学ぼうとしている人、転職を考えているPHP経験者——全員に向けて、現実を整理する。
PHPの現状データ(2026年時点)
まず数字を見る。
Web上でのシェア
W3Techsのデータによると、2026年時点でサーバーサイド言語としてPHPを使用しているWebサイトは約77%。これはWordPress(全Webサイトの約43%)が牽引しているためだが、実数として圧倒的なシェアだ。
2位のASP.NET(約7%)、3位のJava(約4%)と比べると、PHPの存在感は歴然としている。
GitHubでの利用状況
Stack Overflowの2025年開発者調査では、PHPの利用率は約21%。Pythonの54%、JavaScriptの62%より低いが、依然として主要言語の一つだ。
新規プロジェクトでの採用率は確かに下がっているが、既存のPHPコードベースのメンテナンス需要は長期間続く。
日本の求人市場
日本の主要求人サイトにおけるPHP関連求人数(2026年3月時点):
| 言語 | 国内求人数(推定) | 特徴 |
|---|---|---|
| PHP | 非常に多い | Laravelが主流、WordPress案件も多数 |
| Java | 多い | SES・大企業システムが多い |
| Python | 多い | AI/データ・バックエンド |
| Go | 中程度 | 高単価、希少性高 |
| Ruby | 少なめ | Rails案件は減少傾向 |
PHPの求人数は、Goの2〜3倍程度の水準を維持している。「オワコン」の言語の求人数としては説明がつかない。

PHPが「オワコン」と言われる理由の解剖
「PHPオワコン論」には、それなりの根拠がある。正確に理解した上で判断することが大切だ。
理由1: PHP5時代のレガシーコードへの印象
PHP4・5時代のコードは、グローバル変数の乱用・SQLインジェクション脆弱性・型安全性のなさなどの問題が多かった。WordPressのコアコードも含め、「悪いコードの代名詞」になった時期がある。
しかしPHP 7(2015年)〜 PHP 8.3(2023年)でPHPは大きく変わった。
PHP8で変わったこと
PHP 8系では以下のモダンな機能が追加され、コードの品質を格段に高められるようになった:
| バージョン | 主要な新機能 |
|---|---|
| PHP 8.0 | Named arguments、Union types、Match式、Attributes、JIT |
| PHP 8.1 | Enums、Fibers(コルーチン)、Readonly properties |
| PHP 8.2 | Readonly classes、DNF Types、null/false/true スタンドアロン型 |
| PHP 8.3 | Typed class constants、json_validate()、Randomization API強化 |
「PHPは型がない」「PHPは遅い」——これは2015年以前の話だ。PHP 8.3は厳格な型システムを持ち、JITコンパイラによってパフォーマンスも大幅に向上した。
理由2: 新規プロジェクトでの採用率低下
スタートアップや新規サービスでの言語選択では、GoやPython(FastAPI)、TypeScript(Node.js)が選ばれることが増えた。「最新技術を使いたい」というエンジニアの志向が、PHP選択を減らしている。
これは事実だ。しかし既存のPHPコードベースを持つ企業は膨大にあり、そのメンテナンス需要は消えない。
理由3: コミュニティの印象問題
JavaScript・Python・Goのコミュニティは技術的なブログ記事や登壇が多く、「活発なコミュニティ」のイメージがある。PHPコミュニティはLaravelを中心に健全に維持されているが、発信量で比較するとやや見劣りする。
印象と実需要は別物だ。
Laravelの現実:PHPエコシステムの中心
PHPの将来性を語る上で、Laravelは外せない。
Laravelのポジション
PHPフレームワークのシェア(GitHubスター数・求人数ベース):
| フレームワーク | 相対的シェア | 特徴 |
|---|---|---|
| Laravel | 圧倒的1位 | フルスタック、モダン、大規模コミュニティ |
| Symfony | 2位 | エンタープライズ、Laravel内部でも使用 |
| CodeIgniter | 3位(減少) | レガシー案件に残存 |
| WordPress(テーマ/プラグイン) | 別軸で存在 | CMSとして独自のエコシステム |
Laravelは現在、PHPエコシステムの事実上の標準だ。Laravelのソースコードは設計パターンの教科書としても使われており、PHP以外の言語を書くエンジニアも参考にしていることがある。
Laravel 11の現状(2026年)
Laravel 11(2024年リリース)では以下の改善が行われた:
- Slim Application Skeleton: デフォルトのファイル構成がシンプルに
- Health Routing: アプリケーションのヘルスチェックエンドポイントが標準搭載
- API Versioning改善: 大規模APIの管理がしやすくなった
- Pest統合強化: テストフレームワークとの連携改善
Laravelは現在も積極的にアップデートされており、放棄されたプロジェクトではない。
PHPエンジニアの年収相場
求人数が多くても、年収が低ければ「割に合わない」という話になる。実際の年収データを確認する。
経験年数別の年収レンジ
| 経験年数 | PHPエンジニア | バックエンド全体 | 差 |
|---|---|---|---|
| 1〜2年 | 320万〜420万円 | 350万〜450万円 | -30万〜 |
| 3〜4年 | 450万〜580万円 | 480万〜620万円 | -30万〜50万円 |
| 5〜7年 | 520万〜680万円 | 560万〜750万円 | -40万〜70万円 |
| 8年以上 | 600万〜800万円 | 650万〜900万円 | -50万〜100万円 |
PHPエンジニアの年収は、バックエンド全体と比べてやや低め傾向がある。これは求人の多さ(競争が激しい)と、WordPress案件を含む単価が低い案件の比率が影響している。
スタック別の年収差
PHPの年収は、組み合わせるスキルで大きく変わる。
| スタック | 年収レンジ | 説明 |
|---|---|---|
| PHP単体(古いバージョン) | 380万〜500万円 | WordPress・レガシー案件中心 |
| PHP + Laravel | 480万〜620万円 | 現代的な開発案件 |
| PHP + Laravel + AWS | 560万〜730万円 | クラウドを含む設計ができる |
| PHP + Laravel + Docker + テスト | 600万〜800万円 | モダンな開発スタック |
| フルスタック(PHP + Vue/React) | 620万〜850万円 | フロントも担当できる |
「PHPエンジニア」ではなく「LaravelとAWS/Dockerが使えるエンジニア」として転職活動することで、年収レンジが大きく変わる。
システムエンジニアの年収相場を徹底解説|年代・スキル・企業規模別
SEの年収相場全体と、スキル別の年収アップ幅を確認する。PHPエンジニアの転職戦略の参考に。
PHPエンジニアのキャリア戦略
PHPエンジニアが年収と市場価値を高めるための、具体的な戦略を整理する。
戦略1:「レガシーPHP」から「モダンPHP」へのアップデート
PHP5・6時代のコードしか書けない状態は、確かに市場価値が下がりつつある。PHP8の型システム・コレクション操作・非同期処理をマスターすることで、評価が上がる。
具体的なアップデートリスト:
declare(strict_types=1)を前提にした開発- Union型・Intersection型の活用
- Readonly properties によるイミュータブル設計
- Enumを使った値オブジェクト設計
- Fibers を使った非同期処理
戦略2: Laravelの深い知識を積む
「Laravelが書ける」から「Laravelのアーキテクチャを設計できる」に格上げする。
差別化になるLaravel知識:
- DDD(ドメイン駆動設計)とLaravelの組み合わせ
- Horizon(Queueワーカーの管理)とRedisを使った非同期処理
- Octane(Swoole/RoadRunner)を使った高速化
- PHPUnitとPestを使ったテスト駆動開発
- Sanctum/PassportによるAPI認証設計
戦略3: 周辺スキルでフルスタック化する
PHPの求人は多いが、年収の天井を感じたらバックエンド以外のスキルを積む。
フルスタック化に向けた優先スキル:
| スキル | 難易度 | 年収への効果 |
|---|---|---|
| Vue.js or React(基礎) | 低〜中 | +30万〜60万円 |
| Docker + docker-compose | 低 | +20万〜40万円 |
| AWS(EC2/RDS/S3基礎) | 中 | +50万〜80万円 |
| Terraform(インフラコード化) | 高 | +50万〜100万円 |
特にDocker は難易度が低く即効性が高い。「PHPアプリをDockerで環境構築できる」だけで、求人の選択肢が広がる。
戦略4: キャリアチェンジをいつ考えるか
PHPのスキルを持ちながら、別の言語への移行を考える場合:
PHPからの移行先として有力な選択肢:
| 移行先 | 学習コスト | 年収アップ幅 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| Python(Flask/FastAPI) | 低〜中 | +50万〜100万円 | AI/データ分析に興味がある場合 |
| Go | 中〜高 | +80万〜150万円 | 高パフォーマンス・バックエンドを目指す場合 |
| TypeScript(Node.js) | 中 | +30万〜80万円 | フルスタック化を目指す場合 |
ただし、PHPを捨てて別言語に乗り換えるより、PHPのスキルをベースに周辺技術を積み上げる方が多くの場合効率的だ。
受託開発から自社サービス企業へ転職する方法|Rubyエンジニアの転職戦略
Ruby/Railsエンジニアの転職戦略。PHPエンジニアと共通する動的言語からのキャリアチェンジの参考として。
PHPとRuby・Pythonの比較
「PHPを続けるかRuby・Pythonに移るか」という選択を考えている人向けに、客観的に比較する。
言語別の国内求人数傾向
PHPは依然として国内求人数ではトップクラス。Rubyは求人数が明らかに減少傾向にある一方、PHPは横ばい〜やや減少程度に留まっている。
| 言語 | 求人数トレンド | コメント |
|---|---|---|
| PHP | 横ばい〜微減 | Laravelに集中、Wordpress案件も継続 |
| Ruby | 減少傾向 | Rails新規採用が減り、Goへの移行が多い |
| Python | 増加 | AI/データ案件が牽引 |
| Go | 増加 | 高単価、希少性が高い |
Rubyと比較すれば、PHPの求人市場の方が安定している。
まとめ:PHPはオワコンではないが、戦略が必要
データが示す答えは明確だ。
PHPがオワコンでない理由:
- Webサイトの77%が現在もPHPを使用
- 国内求人数はPythonやGoより多い
- LaravelはPHP8を活かしたモダンなフレームワーク
- PHP8.xは厳格な型システム・高速JITを持つ現代的な言語
PHPエンジニアが注意すべき現実:
- 新規プロジェクトでの採用率は低下傾向
- PHP単体では年収の上限が低くなりやすい
- WordPress・レガシーPHP案件は単価が低い
PHPエンジニアが取るべき戦略:
- PHP8の機能を使いこなしてコードの質を上げる
- LaravelのアーキテクチャとテストスキルでDiff(差別化)を作る
- Docker・AWS等の周辺スキルで「PHPが使えるエンジニア」から「PHPを使ったシステム全体を設計できるエンジニア」になる
- 必要なら別言語(Go・Python)へのキャリアシフトを検討する
「PHPがオワコン」かどうかより、あなたがPHPエンジニアとして市場価値を持ち続けるためにどう動くかを考える方が生産的だ。

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