「やめとけ」と言われる理由が、実は人によって全く違う
「フリーランスエンジニアはやめとけ」——この言葉は、誰が誰に言っているかによって意味が全く変わる。
- SES営業が引き止めのために言う「やめとけ」
- フリーランスで失敗した人が言う「やめとけ」
- 会社員として安定志向の人が言う「やめとけ」
それぞれ理由が違う。重要なのは、「やめとけ」の背景にある具体的な理由を理解した上で、自分の状況に当てはまるかどうかを判断することだ。
この記事では「やめとけ」と言われる理由を正直に書く。同時に、その理由が当てはまらない人——つまりフリーランスに向いている人の条件も明確にする。
「やめとけ」と言われる5つの本当の理由
理由1: 収入が途切れるリスクを甘く見ている
フリーランスのリスクとして最も多く語られるのが収入の不安定さだ。ただしこれは「リスクがある」という話であって、「必ず不安定になる」話ではない。
問題は、このリスクを甘く見て準備せずに独立する人が多いことだ。
独立後に直面する現実:
- 最初の案件契約まで1〜3ヶ月かかることがある
- 案件終了と次の案件開始の間に空白期間が生まれる
- 体調不良・怪我で働けない月は収入がゼロになる
会社員時代に「半年の生活費を貯めてから独立する」と決めていない人が、フリーランスで苦労するケースは非常に多い。
理由2: 税・社会保険の負担を知らなかった
独立した後に「こんなに税金を払うのか」と驚く人が後を絶たない。
会社員との差(年収800万円のケース):
| 項目 | 会社員 | フリーランス |
|---|---|---|
| 健康保険 | 約30万円(会社が半額負担) | 約55万円(全額自己負担) |
| 年金 | 厚生年金(会社が半額) | 国民年金のみ(約20万円) |
| 所得税・住民税 | 源泉徴収 | 確定申告(予定納税含む) |
| 実質負担差 | ─ | 年間70〜100万円の追加負担 |
「月単価90万円 × 12ヶ月 = 年収1080万円」のフリーランスでも、税・社保・経費を引いた手取りは700万円前後になることが多い。この計算を事前にしていない人が「思ったより稼げない」と感じる。
理由3: スキルが市場で通用しないのに独立した
「SESで3年経験したので独立した」という人の中に、スキルが転職市場で評価されないレベルのまま独立するケースがある。
フリーランスとSESで決定的に違う点がある。SESは会社が営業してくれるが、フリーランスはスキルで直接評価される。「3年経験」という年数より「何ができるか」が単価に直結する。
月単価75万円以上を継続して獲得できるスキルの目安:
- AWS/GCP で実際のインフラ設計・構築ができる
- TypeScript + React/Vue でフロントエンドを一人で動かせる
- Java/Go/Python でバックエンドAPI を設計から実装できる
- Docker/Kubernetes を業務で使った経験がある
これらのスキルがない状態で独立すると、エージェント経由でも月単価55万〜65万円になり、社会保険の追加負担を考えると会社員より手取りが下がるケースもある。
理由4: 一人で仕事する環境に耐えられなかった
技術力があって収入も安定していても、フリーランスをやめる人がいる。理由は「孤独」だ。
SESや自社開発では、同僚・先輩・チームメンバーという存在がある。技術的な壁にぶつかったとき、キャリアで悩んだとき、横に相談できる人がいる。
フリーランスでは、この相談相手がいない。クライアントには対等に接しなければならず、弱音を吐ける場所がない。
フリーランスエンジニアの退職理由調査(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 2025年版)によると、フリーランスを辞めた理由の上位3位は:
- 収入の不安定さ(38%)
- 孤独・仕事仲間がいない(27%)
- モチベーション維持の難しさ(21%)
技術力・収入に問題がないのに「孤独が辛い」でやめる人が全体の27%存在する。
理由5: 案件ガチャからは脱出できなかった
「SESの案件ガチャが嫌でフリーランスになった」というケースがある。ところが、フリーランスになっても「案件ガチャ」から完全には逃れられない。
特に常駐型の案件では、現場の文化・チームの質・技術環境はクライアント次第だ。「フリーランスなら好きな環境で働ける」は半分正しく、半分は幻想だ。
完全なリモートワーク・自分が興味を持てる技術スタック・理想のチームが揃う案件は、競争率が高い。スキルと実績がない段階では、こうした案件を選ぶ余地は少ない。

向いていない人の条件チェックリスト
以下のうち、3つ以上当てはまる場合はフリーランスの前に別の選択肢を検討することをすすめる。
スキル・実績面:
- 現在の月単価が65万円以下
- AWS・クラウドの実務経験がない
- 実務経験が3年未満
性格・生活面:
- 収入が毎月一定でないと不安を感じる
- 自分から営業・交渉するのが苦手
- 職場の人間関係・チームワークが仕事のモチベーション源
資金・準備面:
- 生活費6ヶ月分の貯蓄がない
- 確定申告・帳簿管理の経験がない
- 家族の収入が自分に依存している
SESとフリーランスの違いを4軸で比較
年収・安定性・自由度・リスクを中立的に比較した詳細記事。独立の判断材料に使える。
向いている人の条件
逆に、以下の条件が揃っている人には、フリーランスは合理的な選択になる。
条件1: 市場単価75万円以上が見込める技術を持っている
転職エージェントにスカウトを受けて、提示年収が700万〜800万円以上であれば、フリーランスでの単価75万〜90万円は現実的だ。
この条件が揃っていない人は、まず転職で年収のベースを上げることを優先した方が将来的なリターンが大きい。
条件2: 半年以上の生活費を確保できている
300万円以上の貯蓄があれば、独立初期の収入空白期間・税負担・社会保険の追加コストを吸収できる。
これ以下の貯蓄で独立すると、最初の案件が取れるまでの精神的なプレッシャーが大きく、条件の悪い案件を受けやすくなる。
条件3: 人脈またはエージェントルートがある
独立してすぐに「案件のあて」がある人は、収入ゼロ期間が短くなる。
- 前職の元同僚・クライアントからの紹介
- 技術コミュニティ・OSS活動からの引き合い
- フリーランスエージェント(Midworks、レバテックフリーランスなど)への事前登録
このいずれかが独立前に確保できていると、最初の3ヶ月が安定しやすい。
条件4: 一人で仕事する精神的負荷に耐えられる
これは自己分析が必要な部分だ。
「SESのチームワークが好き」「困ったとき横にすぐ聞ける環境が重要」という人は、フリーランスでの孤独感がストレスになりやすい。
逆に「自分のペースで集中したい」「人間関係のしがらみから解放されたい」という人には、フリーランスの環境が合う。
条件5: 「SESが嫌」以外の動機がある
「SESから逃げるための手段」としてフリーランスを選ぶと、入った後に問題が続く。
フリーランスに向いている人の動機は:
- 特定の技術分野に専念したい
- 複数のクライアントで多様な経験を積みたい
- 収入の上限を高めたい(そのためのスキルがある)
- 働く場所・時間の自由度を上げたい(家族の事情など具体的な理由)
これらの「前向きな動機」がある人は、独立後の満足度が高い傾向がある。
段階的なアプローチ:いきなり独立しない選択肢
フリーランスに興味があるが不安が大きい人には、段階的なアプローチが有効だ。
アプローチ1: 副業から始める
在職中に副業として受託開発やフリーランス案件を試してみる。月3〜10万円からでも「フリーランス案件を取る」という実体験が積める。
副業を通じて:
- 案件獲得の難易度を体感できる
- 確定申告・帳簿管理を小規模で練習できる
- 「フリーランスの生活リズム」が自分に合うか確認できる
エンジニアが副業で月5万円稼ぐ現実的な方法
副業からフリーランスを試す方法。案件獲得から確定申告の基礎まで解説。
アプローチ2: 転職でスキル・年収ベースを上げてから独立
SESから一度、自社開発企業・SIerに転職して年収を上げると、フリーランス移行時の単価交渉がしやすくなる。
「SES → 転職 → 年収600万円ベース → フリーランス独立」という経路を取った人は、独立後の単価が安定しやすい。SESから直接独立より、年収ベースが高い状態から独立した方がリスクが小さい。
アプローチ3: スキルを集中的に強化してから独立
現状のスキルが「フリーランス単価75万円以上」に届いていないなら、転職か学習かで技術力を上げてから独立するのが正解だ。
急いで独立しても、単価が上がらないまま社会保険の重さに押しつぶされるより、1〜2年かけてスキルを高めてから独立した方が生涯収入は大幅に上がる。

まとめ:「やめとけ」は準備不足への警告だった
「フリーランスエンジニアはやめとけ」という言葉の正体は、準備不足・スキル不足・情報不足への警告だ。
向いていない人がやめとくべき理由:
- スキルが市場単価75万円未満 → フリーランスでも稼げない
- 貯蓄が半年分未満 → 独立初期のリスクを吸収できない
- 収入の波に耐えられない精神構造 → 毎月の不安が積み重なる
向いている人がやめとかない方がいい理由:
- スキルがあれば収入は会社員の1.5〜2倍になる
- 案件選びの自由度が上がり、スキルアップも自分で制御できる
- 年齢を重ねても「稼げる状態」を維持しやすい
どちらの側にいるかは、今すぐ自分の市場価値を調べれば判断できる。転職市場でどう評価されるかを確認するのは無料でできる。「向いているかどうか」を感覚ではなく、数字で判断することから始めてほしい。
SESエンジニアの将来性|AI時代に生き残るキャリア戦略
SESのまま生き残る戦略とフリーランスの比較。長期キャリアを考える材料に。
