SESとWeb系企業——開発文化の根本的な違い
転職サイトでWeb系企業の求人を開いてみてほしい。「React/TypeScript経験2年以上」「Git/GitHubでのチーム開発経験」——SESでJavaやCOBOLをやっていた身には、別世界の言語に見えるかもしれない。
だが、この壁は半年あれば超えられる。
その前に、SESとWeb系企業の違いを正確に理解しておこう。「Web系に行けば全部解決する」という幻想を持ったまま転職すると、ミスマッチで苦しむことになる。
ビジネスモデルが違う
SESは「エンジニアの稼働時間を売る」ビジネスだ。極端に言えば、何を作るかは関係ない。椅子に座って手を動かしている時間に対して金が発生する。
Web系自社開発企業は「プロダクトで稼ぐ」ビジネスだ。ユーザーに価値を届けることが直接売上につながる。だからリリースは速く、改善は頻繁に、ユーザーのフィードバックに敏感に反応する。
| 項目 | SES | Web系自社開発 |
|---|---|---|
| 収益源 | エンジニアの稼働時間 | プロダクトの売上・広告 |
| 開発手法 | ウォーターフォール中心 | アジャイル・スクラム中心 |
| リリース頻度 | 数ヶ月に1回 | 週1回〜毎日 |
| 技術選定 | クライアントが決める | 自社チームで選ぶ |
| コードレビュー | 案件による | ほぼ必須 |
| テスト | 手動テスト中心 | 自動テスト必須 |
技術スタックが違う
SESでよく使われるのはJava(Spring/Struts)、COBOL、VB.NET、Oracle、オンプレミスサーバー、SVN。
Web系で主流なのはTypeScript、React/Vue.js、Next.js、Python/Go、MySQL/PostgreSQL、AWS/GCP、Docker、GitHub。
フルスタックで両方触れることを求められるケースも多く、「バックエンドだけ」「フロントエンドだけ」では応募できない求人もある。
年収は上がるケースが多い
SES(中小)で350万〜450万円の年収帯にいるなら、Web系ベンチャーに移るだけで450万〜600万円に上がる可能性が高い。メガベンチャーなら550万〜800万円帯だ。
ただし、年収だけで判断すると失敗する。Web系企業は「自走力」が求められるため、受け身の姿勢では評価が下がる。年収よりも「成長環境かどうか」を優先して選ぶ方が、中長期的にはプラスになる。
SESと自社開発はどっちがいい?経験者が語る本音の比較
SES・自社開発の年収・働き方・スキルアップを多角的に比較。転職前に読んでおきたい

Web系転職に必要なスキルセット
「何を学べばいいのか」を明確にしておこう。全部を完璧にする必要はない。最低限の武器を揃えて、あとは転職後に現場で磨く——このスタンスでいい。
必須:Git/GitHub
Web系では、Git/GitHubを使ったチーム開発が大前提だ。SESでSVNしか使ったことがないなら、まずここから始める。
- ブランチの作成・マージ
- Pull Requestの作成とレビュー
- コンフリクトの解消
- GitHub Flow
個人開発でGitHubを使い、毎日コミットする習慣をつければ自然と身につく。
必須:TypeScript + React
2026年時点で、フロントエンドの求人はReact + TypeScriptの組み合わせが最多だ。ここを押さえておけば、応募できる求人の幅が一気に広がる。
学習の優先順位:
- JavaScript(ES6+)の基礎 — async/await、分割代入、スプレッド構文
- TypeScriptの型システム — 基本型、ジェネリクス、型推論
- Reactの基本 — コンポーネント、useState、useEffect、Props
- Next.js — App Router、SSR/SSG、API Routes
SESでJavaをやっていたなら、静的型付けの概念はTypeScriptと共通している。学習コストは思ったほど高くない。
推奨:バックエンド
フロントエンドだけでもWeb系には転職できるが、バックエンドも触れると選択肢が広がる。
| 言語 | フレームワーク | こんな人向け |
|---|---|---|
| TypeScript | Node.js + NestJS | フルスタック志向 |
| Python | FastAPI / Django | AI/データ系に興味あり |
| Go | Gin / Echo | パフォーマンス重視 |
SESでJava経験があるなら、TypeScript(Node.js) が最も移行コストが低い。フロントとバックで同じ言語を使えるため、フルスタックエンジニアとしての市場価値が高まる。
推奨:Docker + AWS基礎
Web系企業では、インフラの基礎知識も求められる。
- Docker — コンテナの基本操作、docker-compose
- AWS基礎 — EC2、S3、RDS、Lambda
- CI/CD — GitHub Actionsで自動テスト・自動デプロイ
全部を深くやる必要はない。「Dockerで開発環境を構築できる」「AWSの基本サービスを知っている」レベルで十分だ。
6ヶ月の学習ロードマップ——働きながらでも間に合う
SESで働きながらWeb系転職を目指す前提で、6ヶ月のロードマップを組んだ。平日1〜2時間、休日4〜6時間の学習時間を想定している。
月1〜2:基礎固め
- Git/GitHubの操作を覚える(1週間で十分)
- HTML/CSS/JavaScriptの復習(SES経験者なら要点だけでいい)
- TypeScriptの基礎を学ぶ(公式ドキュメント + Udemy)
この段階のゴール:TypeScriptで簡単なコードが書ける状態。
月3〜4:React + Next.js
- Reactの公式チュートリアルを完走する
- Next.jsのApp Routerを使ったアプリを作る
- REST API連携を実装する
- 状態管理(useState、useReducer)を理解する
この段階のゴール:Reactでシンプルなアプリが作れる状態。
月5:ポートフォリオ制作
- オリジナルWebアプリを開発する
- GitHubにソースコードを公開する
- Vercel/Renderでデプロイする
- READMEを丁寧に書く
ポートフォリオが転職の成否を分ける。 ここに最も力を入れてほしい。
月6:転職活動
- 職務経歴書の作成
- 転職エージェントへの登録
- 面接対策(後述)
- 応募・面接
このスケジュールは余裕を持って組んでいるので、集中できる期間があれば4ヶ月程度に短縮も可能だ。
採用担当者が見ているポートフォリオの「3つのポイント」
Web系企業の書類選考では、職務経歴書よりもポートフォリオが重視される。採用担当者がどこを見ているかを押さえておこう。
ポイント1:デプロイされて動いているか
最も重要で、最も差がつくポイント。「ローカルでは動きます」は通用しない。Vercel、Render、AWSなどで実際にデプロイし、URLをクリックすれば動く状態にしておくこと。
採用担当者がGitHubのREADMEを読んでURLをクリックする——この動線がスムーズかどうかで第一印象が決まる。
ポイント2:コードの品質と設計思想
ソースコードは必ず見られる。チェックされるポイント:
- コンポーネント設計は適切か(1ファイルに詰め込んでいないか)
- 命名規則は統一されているか
- 不要なコードが残っていないか
- テストコードがあるか
完璧である必要はないが、「この人はコードを丁寧に書く人だ」という印象を与えられるかが大事だ。
ポイント3:技術選定の理由を説明できるか
「なぜReactを使ったのか」「なぜNext.jsを選んだのか」——この質問に「流行っているから」ではなく「SSRによるSEO対策が必要だったから」と答えられると、技術的な思考力が伝わる。
READMEに「技術選定の理由」セクションを設けておくのがおすすめだ。
ポートフォリオのおすすめ題材
チュートリアルのコピーは評価されない。「自分の課題を解決するために作ったもの」が理想だ。
- 初級: Todoアプリ、天気予報アプリ(外部API連携)
- 中級: タスク管理ツール、ブログサイト(Next.js + MDX)
- 上級: ECサイト(認証・決済連携)、SaaS型サービス
1つの完成度の高いアプリがあれば十分だが、余裕があれば2つ作ると技術の幅をアピールできる。
SES経験者が面接で聞かれること——回答テンプレ付き
Web系企業の面接で、SES経験者が必ず聞かれる質問と回答のポイントをまとめた。
「なぜSESからWeb系に転職したいのか」
最頻出の質問。ネガティブな本音をそのまま言うのはNG。
ダメな回答: 「客先常駐がつらいから」「レガシー技術しか触れないから」
良い回答の骨格: SESで複数のプロジェクトを経験する中で、プロダクト開発に深く関わりたいという思いが強くなった。SESでは契約期間の制約でリリース後の改善に関われなかったが、御社では自社プロダクトを継続的に改善する開発スタイルに参加できると考えた。
ポイントは「SESのネガティブ」ではなく「Web系で実現したいこと」にフォーカスすること。
「SESの経験をWeb系でどう活かせるか」
SESの経験を否定する必要はない。視点を変えれば強みになる。
| SESの経験 | Web系でのアピール |
|---|---|
| 複数の現場を経験 | 新しい環境へのキャッチアップが速い |
| ドキュメント作成 | チーム開発での情報共有が丁寧 |
| テスト業務 | 品質への意識が高い |
| 業務知識(金融、製造等) | ドメイン知識を活かした開発ができる |
技術的な質問
Web系の面接では、技術の深掘りが多い。以下はよく出る質問だ。
- ReactのuseStateとuseEffectの違いは?
- TypeScriptのジェネリクスはどういう場面で使う?
- REST APIとGraphQLの違いは?
- Gitのrebaseとmergeの違いは?
- HTTPSの仕組みは?
ポートフォリオで使った技術は、深く説明できるようにしておく。知らない質問は正直に「まだ学習中だ」と答えて構わない。嘘をつくよりも、「学ぶ意欲がある」姿勢を見せる方が評価される。
コーディングテスト対策
Web系企業の多くがコーディングテストを実施する。AtCoderやLeetCodeで基本的なアルゴリズム問題を練習しておくといい。
完璧な回答を出すことよりも、思考プロセスを声に出して説明することが重視される。「まずこう考えて、次にこう絞り込んで……」と論理的に考える力を見せよう。
転職活動の進め方——エージェント選びから内定まで
ここからは転職活動の実践的な進め方をまとめる。
ステップ1:スキルの棚卸し
SESで経験した技術スタック、担当したフェーズ、個人開発で作ったもの——これらを整理して、職務経歴書に落とし込む。
SESの経験は「案件ごとに技術が違う」ことが多いため、「一番深い経験」と「個人開発で伸ばした技術」の2軸で整理すると伝わりやすい。
ステップ2:企業タイプを選ぶ
Web系企業にも種類がある。自分に合ったタイプを選ぼう。
| タイプ | 特徴 | こんな人向け |
|---|---|---|
| メガベンチャー | 高年収、体系的な教育 | 安定志向、キャリアアップ重視 |
| スタートアップ | 裁量が大きい、幅広い経験 | 自走力がある、成長速度重視 |
| BtoB SaaS | 安定した開発、ドメイン知識活用 | 業務知識を活かしたい |
| 受託寄りWeb制作 | 案件が多様、ハードル低め | まずはWeb技術の実務経験を積みたい |
ステップ3:エージェントを使う
Web系企業の採用基準はSIerとは全く違う。ポートフォリオの見せ方、技術面接の対策まで踏み込んでくれるエージェントを選ぶべきだ。
TechGo はIT・Web業界に特化しており、SESからWeb系への転職支援の実績が豊富だ。技術面接のポイントや、SES経験をどうアピールするかのアドバイスがもらえる。年収アップ率95%、平均138万円アップの実績も心強い。
ステップ4:応募と面接
- 最初の数社は練習のつもりで受ける。本命は後に回す
- 企業のプロダクトは必ず事前に使ってみる
- 逆質問を用意する(「開発チームの構成は?」「コードレビューの文化は?」など)
- カジュアル面談があれば積極的に活用する
ステップ5:内定と条件確認
内定が出たら、年収だけでなく以下も確認する。
- 配属先の技術スタック
- リモートワークの可否
- 評価制度とキャリアパス
- チーム構成と開発体制
複数の内定がある場合は「成長環境かどうか」を軸に判断する。目先の年収差50万円よりも、3年後のスキルの差の方がキャリアに与える影響は大きい。
SESを辞めたい人の転職先の選び方|理由別おすすめと成功事例
転職先の選び方を理由別に整理。Web系だけでなく全選択肢を比較したい人向け
SESと自社開発はどっちがいい?経験者が語る本音の比較
自社開発に転職する前に、SESとの本質的な違いを知っておこう
スキルアップをさらに加速させたい場合
Web系転職後のキャリアをさらに伸ばしたい、あるいは独学では不安という人には体系的な学習も選択肢になる。
Winスクールは現場で使えるスキルを短期間で習得できる環境が整っており、Java・React・AWSなどのWeb系技術を実務レベルまで引き上げるカリキュラムが充実している。転職後のスキルアップにも活用できる。

半年後、別世界にいる自分を想像してみてほしい
SESからWeb系への転職は、キャリアを根本的に変えるチャンスだ。モダンな技術スタック、アジャイル開発、コードレビュー文化——SESでは経験できなかった世界が待っている。
「SESの経験しかないから無理だ」と思う必要はない。ポートフォリオを作り、技術面接を突破すれば、Web系企業は経歴よりも「今の実力」と「成長意欲」で判断してくれる。
壁は確かにあるが、半年で超えられる壁だ。今日から学習を始めて、半年後に新しいキャリアをスタートさせてほしい。
SESで年収が上がらない構造的な理由と解決策
年収面の不満もWeb系転職で解消できるかを確認しよう
