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SES多重下請け構造の見分け方と抜け出す方法
キャリア2026年3月22日· 17分で読める

SES多重下請け構造の見分け方と抜け出す方法

SES多重下請けキャリア転職IT業界

この記事の要点

IT業界の多重下請け構造がエンジニアの年収と成長に与える悪影響を解説。5次下請けでは元請けの3〜4割しか単価が届かないケースもある。自分が何次にいるかの見分け方と上流移動の戦略を具体的に示す。

IT多重下請け構造とは何か

日本のIT業界には独特の「多重下請け構造」が根付いている。大手SIerが元請けとして受注し、2次・3次・4次と下請けに仕事を流していく仕組みだ。

エンドユーザー(発注者)→元請けSIer→2次請け→3次請け→SES会社→エンジニア、という構造が典型例だ。この構造では、各層が中間マージンを抜くため、末端に近いほどエンジニアの取り分が少なくなる。

経済産業省の「IT人材白書2023」によれば、IT系受託開発の約60%が2次以上の下請け案件であり、業界全体に深く組み込まれた構造であることがわかる。

問題は年収だけではない。3次・4次の下請けになると、エンジニアは要件定義や設計に関与できず、詳細設計以降の実装・テスト作業しか担当できないことが多い。これがスキルの上昇気流に乗れない原因になる。

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自分が何次下請けか見分ける方法

自分が何次下請けにいるのかを把握している人は少ない。だが、これは年収交渉やキャリア判断に直結する重要な情報だ。

方法1:契約書類を確認する

雇用契約書や業務委託契約書の「委託元」「発注元」の会社名を確認する。自社とは違う会社名が出てくるなら2次以降の可能性がある。「XX社経由でYY社の案件」という説明を受けた場合、XX社が1つ上の下請け層になる。

方法2:現場で聞こえる会社名を調べる

常駐先で飛び交う会社名、プロジェクト資料に書かれているSIer名、上位側の担当者の名刺——これらをもとに、元請けから自社までの系列を追うことができる。

「NTTデータ→Aシステム→B技術→自社」という構造が見えれば、自社は3次下請けだとわかる。

方法3:エンドユーザーとの距離で判断する

エンドユーザーの担当者と直接話す機会があるなら、近い層にいる可能性が高い。反対に、エンドユーザーが誰かを知らされていない、客先にいる上位SIerのエンジニアと指示系統が分離されている場合は、下流層にいると考えた方がいい。

方法4:自社の営業担当に直接聞く

「この案件は何次請けですか?」と直接聞くのが最も確実だ。答えを濁したり「元請けに近い」という曖昧な回答しか得られない場合、それ自体が情報になる。

多重下請けがエンジニアに与える3つの悪影響

多重下請け構造の弊害は、単純な「賃金カット」以上に広い範囲に及ぶ。

悪影響1:年収の構造的な上限

中間マージンが多層に積み重なるため、エンジニアの単価がどれだけ高くなっても、最終的な手取りに反映される割合が低くなる。

例として、エンドユーザーが月100万円で発注した場合を考える。元請けが15%抜いて85万円で発注、2次請けが10%抜いて76.5万円、3次請けがさらに10%抜いて約69万円——これがSES会社への支払いになる。そこからSES会社が利益を取ると、エンジニアへの支払いは60万円を切る場合もある。

悪影響2:上流工程スキルが身につかない

3次以降の下請けに与えられる作業は、詳細設計・実装・テストが中心だ。要件定義や基本設計に関与する機会がほぼない。5年・10年と経験を積んでも「上流工程の経験なし」という状態になる。

転職市場において、上流工程の経験がないエンジニアは年収の伸びが止まりやすい。35歳以降で顕著に差が出る。

悪影響3:顧客との信頼関係が築きにくい

下流層のエンジニアは、エンドユーザーとの接点が少ない。「お客さんに価値を届けている」という実感が持ちにくく、モチベーションの維持が難しくなる。

多重下請けから抜け出す3つのルート

多重下請け構造から抜け出す方法は大きく3つある。それぞれのルートに求められるスキルと時間軸が異なるため、現状に合ったものを選ぶ必要がある。

ルート1:現在のSES会社内でプライム案件を掴む

SES会社の中には、エンドユーザー直契約(プライム案件)を持っているところもある。社内の別エンジニアがどんな現場にいるかを把握し、プライム案件に入りたいと営業担当に伝えることで、次の案件をプライムに近い場所にしてもらえることがある。

この方法は時間はかかるが、転職せずに済む可能性がある。ただし、今の会社がプライム案件を持っているかどうかが前提条件だ。

ルート2:元請けSIerや自社開発企業に転職する

最も確実に多重下請けから脱出できるルートだ。転職市場では、SES経験者が元請けSIer・自社開発・ITコンサルに転職するケースが増えている。

転職に有利なスキルは、要件定義・基本設計の経験、PM補佐・PMOの経験、顧客折衝の実績だ。これらの経験がなくても、「上流に移りたい意欲と学習履歴」を示せれば転職できるケースがある。

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ルート3:フリーランスとして高単価案件を直受けする

フリーランスになることで、SES会社の中間マージンをなくし、エンドユーザーや元請けと直接契約できる場合がある。フリーランスエンジニアの平均月単価は2024年時点で約82万円(レバテックフリーランス調べ)であり、正社員SESより高くなるケースが多い。

ただし、案件獲得の安定性と社会保険・福利厚生の自己管理が課題になる。最低3〜5年の実務経験があることが前提となる。

SES多重下請けが横行する業界構造の背景

多重下請けが根絶されない理由を理解しておくことは、キャリア判断に役立つ。

大手SIerのリスク転嫁モデル

大手SIerが受注したプロジェクトをそのまま下請けに流す理由は「リスクを転嫁しながら利益を得る」ことだ。要件変更や工数超過のリスクを下流に押しつけ、自社は管理コストだけで利益を得るモデルが定着している。

人月ビジネスの呪縛

「人月×単価」で計算する受託ビジネスモデルでは、エンジニアの数が多いほど売上になる。そのため、SES会社は「人をたくさん持ちたい」という動機を持ち、エンジニアを増やしてピラミッドを維持しようとする。

DXによる内製化の流れと今後

近年、大手企業のDX推進によって「ITを内製化したい」という動きが強まっている。エンドユーザーが自社でエンジニアを雇うケースが増え、中間層の仕事が一部薄くなっている。

これはエンジニアにとってはチャンスだ。内製化を進めている企業は、SES経験者を積極採用しているケースが増えている。

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多重下請けから脱出するためのスキルロードマップ

多重下請けの外に出るには、「上流で使えるスキル」を持つことが前提になる。現在の業務と並行して身につけるべきスキルを段階的に整理する。

フェーズ1:現在の案件で実績を作る(0〜1年)

いまいる現場で「この人がいると助かる」という実績を積む。コードレビューの参加、バグ対応の迅速さ、ドキュメントの丁寧さ——地味に見えるが、これが上流工程への扉を開く信頼の土台になる。

フェーズ2:要件定義・設計の知識を学ぶ(1〜2年)

UML、ER図、要件定義書の書き方を独学または資格(基本情報・応用情報)で習得する。現場で設計書を読む機会があれば積極的に参加し、「業務理解ができるエンジニア」としてのポジションを作る。

フェーズ3:PM補佐・顧客折衝の経験を掴む(2〜3年)

現場で「議事録を書く」「進捗管理を手伝う」というタスクから始め、徐々に顧客との接点を増やす。この経験が転職市場での差別化ポイントになる。

まとめ:多重下請け構造を知ることがキャリア判断の出発点

IT多重下請け構造は、エンジニアの年収とスキル成長の両方に構造的な制約をかける。この制約を「個人の努力で突破する」のには限界がある。構造を理解したうえで、「今の層で最大限の経験を積む」か「上流の層に移る」かを意識的に選ぶことが重要だ。

まず自分が何次下請けにいるかを確認する。その上で、プライム案件への移動・元請け企業への転職・フリーランス化という選択肢を現実的に検討する。

多重下請け構造は一人では変えられないが、個人が「上流に移る」選択をすることは今すぐできる。

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よくある質問

Q自分が何次下請けかを知る方法はありますか?+
A

契約書の「委託先」欄を確認するのが確実です。また、現場でよく使う会社名を調べると資本関係が見えます。「エンドユーザーの企業名→元請け→自社」の構造を営業担当に直接聞くのも有効です。

Q多重下請けでも年収は上げられますか?+
A

上げられますが限界があります。3次以降の下請けでは、上流が抜く中間マージンが多層になるため、単価が上がっても手取りへの反映が小さくなります。根本的な年収改善には、上流企業への転職が近道です。

QIT多重下請け問題は解消される方向にありますか?+
A

DX推進でエンドユーザーの内製化が進みつつあり、中間業者の層が一部薄くなっています。ただし業界全体の構造変化には時間がかかります。個人としては「上流スキルを身につけて上流に移る」という個別の戦略が現実的です。

Q多重下請けから抜け出すのに有効なスキルは何ですか?+
A

要件定義・基本設計などの上流工程スキル、PM・PMOの経験、英語(外資系への道が開ける)などが有効です。加えてコミュニケーション力と顧客折衝の経験は、元請けへの転職で非常に評価されます。

QSES会社を選ぶとき多重下請けを避ける方法は?+
A

主要取引先に大手SIerや事業会社が多いかを確認します。「プライム案件あり」「エンドユーザー直契約あり」と明示している会社は元請けポジションが多い傾向があります。口コミサイトで現場の実態を確認するのも有効です。

テックキャリア解析所 編集部

元SESエンジニア|IT業界10年

SES・SIerでの実務経験をもとに、ITエンジニアのキャリア設計・転職・スキルアップに関する情報を発信しています。